晴れ渡った空に新緑が映える、爽やかな一日。
当工房のランドセル「
オールコードバン 夢こうろ染」でも染めを手掛けていただいている、染色作家・奥田祐斎さんの「
染工房 夢祐斎」へ研修に伺いました。
大堰川(おおいがわ)を眺めながら、山の斜面に沿って続く石段を登っていくと、かつて料理旅館であったという趣のある工房が見えてきました。そして、祐斎さんと奥様の恵美さんが笑顔でお出迎えくださりました。
染めの歴史、黄櫨染、そして夢こうろ染
工房では、京都や嵐山の環境の良さや歴史、そして染めの歴史について、祐斎さんがユーモアを交えて解説してくださりました。
染料は、古くは薬効成分が重視され、京都で一番古い染料店は、もとは薬屋だったそう。今も昔も、“体に良い” ”色あせない“ ”高価・高貴“の3つが良い染料の条件であるといいます。
平安時代初期から存在し、 嵯峨天皇によって天皇だけが着用できる第一礼装に定められた「黄櫨染(こうろぜん)」。祐斎さんはこれを「太陽を宿す染め」だと言います。
祐斎さんはこの黄櫨染を染色作家として初めて調査・研究され、自分なりのアレンジを加えて「夢こうろ染」として再現・発展されました。
そのままでもたいへん深みのある色合いですが、太陽の光や白熱灯に照らされると、暗い色合いから赤みが差した鮮やかな色に変化することが最大の特徴です。
赤の要素のない黄緑色からも赤色が出る不思議。神秘的で生命力を感じます。
夢こうろ染は化学薬品を使わず、草木のみを素材にした染色技法です。
一般的な染料の素材である櫨(はぜ)・蘇芳(すおう)・紫根(しこん)を特定の配合で組み合わせたときにだけ、色が変わるという不思議な性質を持つのだそうです。
祐斎さんが自らの制作姿勢について、「環境や自然のものを“自己表現のための道具”ではなく、それらの“調和点”を見つけていく」と力強くおっしゃっていたのがとても印象的でした。
奥田祐齋さんによる染めの実演
お昼に美味しいお弁当をいただいた後は、スカーフ染めの実演を拝見。
「せっかく皆さんがお越しなので、賑やかな感じに……」と、みるみるうちにスカーフがカラフルに染まっていきます。
染め終わった絹の布は、水の含み加減や乾燥時間などにより、時間が経つと筆を入れた直後とはまた違った表情になります。
続いて祐斎さんが一気に染めあげられたものは、筆の流れの勢いはそのままに、先ほどとは違ってシックな色合い。
物腰が柔らかく穏やかな祐斎さんですが、染めるお姿からは静かな迫力を感じました。
実際に染めてみました!
実演後には、参加者全員がハンカチの染め体験をさせていただきました。
絹の布にしっかりと水を含ませ、それぞれが思い思いの色を布に落としていきます。
祐斎さん曰く、うまくいくコツとしては「黒を入れる」こと。全体を締める効果があり、黒髪と黒の瞳が多い日本人にも合うからだそう。
染めた後は、しばらくヒーターで乾燥させ、
最後にアイロンをかけて色止めをして、完成!
体験後は、染め場の隣のギャラリーで恵美さんが淹れてくださったコーヒーをいただき、ほっこり、まったり……。
染めに魅せられ、ロマンあふれる祐斎さんと、清らかな雰囲気をまとった恵美さん。
終始あたたかく丁寧におもてなしくださり、素敵な時間を過ごさせていただきました。
専門分野は違っても、同じものづくりに向き合う職人として、一日を通して祐斎さんの姿勢から学び、感じた多くのことを、これからに生かしていきたいと思います。
また、「夢こうろ染」の魅力をより深くお客様にお伝えしていきたいと思います。
夢祐斎の皆さま、ありがとうございました。