革の割り〜感覚を研ぎすまし革を薄く

鞄工房山本のランドセル作りの工程には、『割り』という作業がある。その作業を紹介してくれたのは栢木(かしき)。

革を『割る』とは

裁断された革を『割る』とは、厚みのある革をランドセルの部位に適した厚さに均一にしていく作業である。 例えば、折り曲げる部分は厚い革では反発してしまい、うまく加工が出来ない。だからきれいな仕上がりになるように一枚一枚、適切な厚さにしていく。 しかし、強度を保たなければならない部分もある。だから実際に折り曲げる部分は次にある『漉き』の作業でより薄くする。専用の機械にスーッと通しているだけのように見えるが、そうではないようだ。 数値だけではなく感覚でよりよい薄さにする栢木(かしき)。

数値だけではなく感覚でよりよい薄さにする栢木(かしき)。

まず、ドイツ製の機械の中には金属製の歯が入っており、この歯は1ヶ月もすると半分近くまで減ってしまう。 また、革の細かい繊維くずがでてくるので、一日数回きちんと手入れを行なわなければ革が一定の厚さにならないのだという。 1ロット50枚のものを、手入れの行き届いた機械へ。5分〜10分で大きなものの作業を終える。通し始める前には、手元のボタンで厚さを設定する。そして、小さなライトの位置を調整する。 「薄めに加工しなければならないものは目標の厚さ半分くらいに一旦加工して、再度薄くする作業をしていきます。ライトですか?これで光を当てて表面の状態を確認しています。そして、出てきた革の裏面も見て、薄くなったことで見えてくる革のダメージも確認していきます。」 つまり、隠れていた血管などというランドセルの使用に適さない部分をここでも再度確認し、最高の素材となるように細心の注意を払っていくのだ。 割りの作業で再度、裏面の品質確認も怠らない。

割りの作業で再度、裏面の品質確認も怠らない。

終わった革は、測定器できちんと厚みを確認していく。使われる革の部位によっても、繊維密度の違いもある。柔らかさも違う。 一つひとつの革に対し、何重もの確認が人の目で行なわれている。その確認によって強度があり、品質の高いランドセルへとつながっていくのだ。 ゲージはあくまでも数値をはかるため。感覚がものを言う仕事でもある。

ゲージはあくまでも数値をはかるため。感覚がものを言う仕事でもある。

割りの作業で達成される薄さは、6年間の使用に絶対の安心を与えられる強度であって、これ以上薄くてもいけない。この計算し尽くされた部材づくりは指先、目、そして経験によって成り立っているのだ。

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