私が大切にしているもの vol.3「そろばん」

~この連載では、鞄工房山本で働くスタッフが長年大切にしているものをご紹介いたします~ 私は、鞄工房山本で経理を担当しています。 私が大切にしているものは、27、8歳の頃に師匠からいただいたそろばんです。 師匠とは、当時勤めていた会社が依頼していた会計顧問の方で、年齢が20ほど上のフジタ先生。働きはじめて間もなく右も左も分からなかった私に、経理の仕事の基礎をしこんでくださった方です。社外の方ではあるものの、週に何度も来社され、一緒にお仕事をさせていただきました。 ランドセルの鞄工房山本 経理の仕事をしている人にとって、そろばんは、いわば一番の商売道具。当時の経理は、本当に何から何まで、計算のすべてをそろばんで行っていました。 師匠とは21歳から一緒にお仕事をさせていただいていましたが、私が27、8歳の頃、会社の経理部門の統括を私に任せていきたいというお話をいただきました。そのときに突然、このそろばんをプレゼントしてくださって……。 心から尊敬している方からいただいたということもあって、うれしかったですね。「がんばれよ!」という応援の気持ちを込めて贈ってくださったのかなと思います。 長く仕事を続けているともちろん、ミスをしたり、スランプに陥ったりするときもありました。そういう時期のことも含めて、これまで積み重ねてきたすべてのことがこのそろばんには詰まっています。 まさに「一生の宝物」なので、今でもこのそろばんを見たら師匠を思い出します。初めて決算を担当させてもらって、完成した書類を師匠に持っていったときはすごくうれしかったなあ……。 私も師匠も途中で転職したので、いまもまだお元気かどうかはわからないのですが、もし師匠にお会いできたら「おかげさまで今もこの仕事をしています」とお礼を言いたいです。 電卓や計算ソフトが普及して、道具としてそろばんを使うことが少なくなってからも、勤務時間を計算するときに使うこともありました。時間と分を一緒に計算できることもあって、60進法の計算であればそろばんを使ったほうがわかりやすかったんです。 計算の道具というだけでなく、計算の基礎を身につけられて、頭を働かすのにもいいと言われているように、そろばんにはそろばんの良さがありますよね。 ランドセルの鞄工房山本 いただいてからもう30年ほどたち、頻繁に使わなくなってからも引き出しの中に大切にしまっていたんですが、実はこの4月から、そろばん教室に通いはじめた孫が使っています。といっても、まだ4歳なので実際にこのそろばんを使って計算するのはまだもう少し先ですが……。 新しく買ってあげることも考えたんですけど、たくさんの時間や思い出の詰まったそろばんから、積み重ねられた気持ちとか思いが少しでも伝わっていったらと思って。 もし、孫がもう少し大きくなって「新しいものがいい!」と言い出したら、実はこれはおばあちゃんの大切なそろばんなんだよという話をしてみようかなと思います。

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