こんにちは。
奈良本店の奥田です。
皆さん、ランドセルってどうやってつくられているかご存知ですか。
鞄工房山本では実際にランドセルをつくっている工程を間近で見学していただける工房がございますので、もう知ってるよ!という方もいらっしゃるかもしれません。
そんな知識人の方もまだまだ知らないという方も一緒に、ランドセルがつくられる工程を楽しく知っていただきたいなと思い、新企画をご用意いたしました。
題して!
「このパーツなーに?」
当社ではランドセルの細かいパーツをつくる班や、つくったパーツを縫い合わせる班など、それぞれ6班に分かれて作業をしています。
出来上がったランドセルからは想像もつかない細かいパーツを見て、それがどこにあるのか当てていただきながら、ランドセルの奥深さをお伝えしたいと思います。
第1回目の今日は「肩ヒモ・背中班」から出題します。
まず「肩ヒモ・背中班」ってなーに?
お子さまと荷物の重さをしっかりと繋ぐパーツをつくる「肩ヒモ・背中班」
(工房では肩ベルトを肩ヒモと呼んでいますが、呼び方が違うだけでどちらも同じ意味です。)
ランドセルの「背中」。
こちらは硬さの違う2種類のウレタンフォームで深い凹凸をつくり、通気性に優れた人工皮革でやさしく包みます。
その背中から伸びている長いパーツを「肩ベルト」と言います。
ランドセルの底下から伸びている短いパーツは「小ヒモ」と言います。
この班では主にこれらのパーツをつくっており、今回はこの中から2問程出題したいと思います。
このパーツなーに?(第1問)
じゃじゃんっ!
こちらは大人の女性の手にも収まるぐらいの少し細長い小さな革パーツ。
両端にはチョンチョンと小さな穴が空いています。何か金具で留めるための穴でしょうか。
この革は少し小さいものと、少し大きいもの。二種類あるそうです。
さぁ、一体どこについているパーツかお分かりでしょうか。
ちなみに工房スタッフは「地味だけど可愛いパーツなんだよね」と言っていました。
ヒントは、輪っかにして何かを通すためのパーツです。
正解は……。
こちら!
「指差し」と呼ばれている肩ベルトを通す輪っかでした。
肩ベルトがブラブラと遊んでしまわないためにしっかりと固定する大切なパーツです。
指差しをつくる工程を簡単にご説明いたします。
さきほどの細長い革にノリを塗って折り合わせます。一番最初のこの作業は地味ですが意外とここが大事だそう。
この後に革を平らにするためのローラーをかけるため、ぴったりはみ出ないように折らなければズレが生じてしまうのです。
ランドセルづくりの中でも小さなパーツをここまで細かく折る工程は他の班にはないのだとか。
半分に折り合わせた革を高速で回るローラーに通して均一に平らにします。
とても速すぎて目で追うのもやっと、というようなスピードで手早くシュッシュッと通していきます。
ローラーをかけ終わったら、ミシンで縫い上げます。
ダダダダッといくつか革を繋げて縫い、その後に一つひとつ切り離します。
次に突起がついた機械に金具と縫い上げた革をクルッとはめ込み、ガチャンッと踏み込み式のスイッチを押せば……。
出来上がりです。
コロンとした可愛らしい形ですよね。
この後は小ヒモの革に金具や輪っかを通せば、小ヒモの完成です。
先ほどお伝えしたように、指差しの大きさは大小2つ。
肩ベルトの上部についているのが大きい方。
先端の下部についているのが小さい方。
少しの違いではありますが、大小の輪があることによってきちんと肩ベルトが固定されるのです。
また、革を2つ折りにしているのにも理由があります。
肩ベルトを通す際、革の張り合わせた面に当たらないため、よりスムーズに通せるのです。
このパーツなーに?(第2問)
さぁ、続いてはこちら。
両手のひらにも収まらないくらいの大きめのサイズ。
丸く開いた穴は目と鼻、グーーッと開いた隙間が口に見えませんか?
まるでにっこりと微笑んだ顔のよう。思わずこちらまで頬が緩んでしまいそうですね。
口に見えるような隙間は何かを通す部分。
これはなかなか難しいですが、皆さん分かりましたか?
正解は……。
こちら!
先ほどの写真をひっくり返すと、このような形になります。
ランドセルの金具や肩ベルトを通す「はかま」と呼ばれている背中の部分でした。
すぐに分かった方はきっとランドセルマニアですね。
はかまをつくる工程も簡単にご説明いたします。
はかまは背中に貼り合わせた後、大きなコンピューターミシンで縫い付けます。
コンピューターミシンと聞くと「簡単そう」だと思われる方が多いですが、実は細かい調節がいる難しい工程なのだそう。
慣れるまでもなかなか難しいのだとか。
ふわふわとした立体的な背中に縫い付けることになるので、針が革からずれないように指で革をおさえつつ調整。
しかも針が走ってくるところを指で押さえるため、慣れない最初のうちは少し怖いのだそう。
とても集中力がいる大変な作業です。
そのような苦労を乗り越え、最後に「まとめ班」で他のパーツと組み合わせて、完成したのがこちら!
ステッチや革の曲線が金具の部分を美しくカバーしてくれます。
聞いてよ!肩ヒモ・背中班の自慢
ではここで「肩ヒモ・背中班」の自慢を聞いてみたいと思います。
肩ヒモ・背中班は工程数は少ないけれど、パーツの種類が多いそう。
「1個のランドセルに肩ベルトは2つ必要だからつくる数が多い。とにかく部品が多い。」
と、笑みをこぼしながらも誇らしげに語る肩ヒモ班の班長。
1日にランドセルを70本つくるとしたら、肩ベルト140個。
しかも1個の小ヒモに指差しが2本ささっているので、70個のランドセルに対して指差しは4倍の280個使われていることになります。
そう聞くとものすごい数ですね……。
「このパーツはよくできていて面白い!」「これは地味だけど可愛くて個人的に好きなんだ。」などなど。
キラキラと輝く目であれもいい!これもいい!とまっすぐに語ってくれるスタッフの姿はまるで少年のようでした。
工房ではこのように自分の仕事に自信をもち、好きだからこそ一生懸命になれるというスタッフばかりです。
他にもこの班のこだわりが。
背中の両端にヘリ革という細長い革を貼るのですが、ここは大ベテランが定規で長さをきちんと確認しながら貼り合わせます。
なぜここまできちんと測るのかというと、ここをぴったりの長さにすることによってランドセルの端と横面に隙間が空かず、ほこりが入りにくいようになるのです。
このひと手間がこだわりなのだそうです。
買ってくださる方にメッセージ
最後にお客さまに思いを届けたいというスタッフから一言。
「肩ベルトと背中は必ずお客さま側に触れる部分であり、丈夫につくらないといけない部分です。
そのパーツを見た方がきれいだなって思ってくださることはもちろん、背負った方にしかわからない快適さを感じていただけるようなパーツを今後もつくり続けていけたらと思ってます。
丈夫につくっていますので、元気いっぱい使っていただければ嬉しいです。」
このように、一つひとつ工房のスタッフが心を込めてつくっているランドセルをパーツごとにクイズ形式で紹介していきながら、ランドセルづくりの魅力を一緒にお伝えしていこうと思います。
次回はランドセルの蓋の部分をつくる「タレ班」からクイズを出題します。
お楽しみに!