こんにちは。奈良本店の竹森です。
朝夕には涼しい風が吹き、秋の訪れを感じることが増えてきました。まだまだ日差しは強く出かけるのが億劫になる日もありますが、あるお寺で涼しげな「手水舎」を見ることができると聞き訪れました。
今回、私たちが訪れたのは明日香村にある「岡寺」です。鞄工房山本から車で15分ほどの場所にあります。岡寺はその地名の「岡」という名から親しみを込めて岡寺と呼ばれるようになりましたが、古くからの正式な寺名は「龍蓋寺(りゅうがいじ)」とされています。日本で最初の厄除け霊場として知られるお寺です。
鎌倉時代の歴史物語で有名な『水鏡』の序の冒頭には「慎むべき年にて、過ぎにし二月の初午の日、龍蓋寺へ詣で侍りて……」とあります。慎むべき年は「厄年」のことです。「厄年の最初の午の日に岡寺へお参りすると良い」と書かれており、当時から岡寺は厄除けのお寺として定着していたことがうかがえます。何百年も前から現在まで変わらず人々がお参りに訪れていることに、なんとも感慨深い気持ちになりますね。
日本で最初の厄除け霊場
岡寺は約1300年前、天智天皇の治世に義淵僧正によって創建されました。
日本最古の巡礼として参拝者が多いことで知られている、西国三十三所の第7番札所として、岡寺は広く信仰されています。
ちなみに、西国三十三所は今年で草創1300年を迎えます。札所である各寺では限定御朱印の授与や特別拝観など様々な記念事業が開催されていて、その1つに「スイーツ巡礼」といった珍しいものがありました。各札所が周辺の名物スイーツを紹介するというもので、岡寺でも「スイーツ巡礼」にちなんだ「厄除けせんべい」や「厄除けぜんざい」が販売されており、普段の巡礼とは少し違った目線で楽しむことができそうですね!
岡寺の入り口、仁王門では左右に安置された金剛力士の像がお寺を守ります。埋蔵文化財が多い明日香村ですが、岡寺の仁王門と書院は明日香村で唯一の重要文化財に指定されています。こちらの仁王門の四隅には「阿獅子・吽獅子・龍・虎」の4種類の動物の像があります。
龍蓋寺の「龍」も、お寺を見守っています。
お寺から涼し気なおもてなし
仁王門をくぐると左手に手水舍があります。この日はとても涼しげな「浮き玉の手水舍」を見ることができました。
身を清めるための「手水舍」ですが、たくさんの浮き玉が浮いているのは風情があり、なんだか嬉しい気持ちになります。ご家族でお寺に訪れていたお子さまも「何か浮いてる~」と手水舍の浮き玉に興味津々でした。
澄んだ水の上をぷかりぷかりと浮かぶ浮き玉は、見ているだけで涼しくなりますね。
浮き玉の柄はお花や金魚、花火など様々です。水の中をよく見ていると、浮き玉の下にダイバーが隠れている浮き玉も発見しました!みなさまも訪れる際にはぜひお気に入りの浮き玉を探してみてください。
フォトジェニック!境内を彩るお花!
岡寺は厄除けで有名なだけではなく「お花の寺」とも呼ばれます。
4月から5月頃には、約3,000株の石楠花(シャクナゲ)など境内の花々が見頃を迎えます。
また、G.W(4月下旬連休より5月上旬G.W終わり頃まで)期間中は、天竺牡丹(ダリア)が境内を彩ります。なんと、鮮やかな色のダリアが手水舍や仁王門近くの池に数多く浮かべられ、その様子がまるで「極楽浄土」のようであると人気です。
現在は一旦終了していますが、境内にいくつか配置されている「華の鉢」を楽しむことができました。
鉢の中に浮く花々はとても華やかで、存在感を放っています。
こんなにも鮮やかな花たちが手水舍や池を埋め尽くすことを考えると、想像するだけでわくわくとしますね。
本堂へお参り
手水舍の向かいには樹齢500年のさつきがあります。開花時期が過ぎているため花はを見ることができませんでしたが、太く伸びる幹と緑の葉はとても存在感があります。
大きなさつきの木の周りをぐるっと一周するように階段を登ると、いよいよ本堂が見えてきました。
ご祈祷を唱える声が響き、神聖な空気が流れます。
お寺の本堂には「如意輪観音座像」が御本尊としてまつられています。この仏像は重要文化財に指定されており、土でつくられた仏像としては日本最大とされています。その大きさはなんと5メートル近くあり、遠くから見ても大迫力です。
本堂横では、ご祈祷の受付があり数多くのお守りや絵馬が並びます。厄除けのお守りだけでなく、可愛らしいお守りやおみくじなど豊富な種類でついつい迷ってしまいます。
「起きゃっがり御守り」という動物のお守りは、コロンと転がっても起き上がるお守りです。右は「犬」、左はお寺の名前にもなっている「龍」をモチーフにしているようですね。
本堂の周りにはたくさんの絵馬が奉納されていました。絵馬にはとても可愛らしいイラストで御本尊が描かれていて、ほっこりとします。
古くから明日香に響く鐘の音色
本堂の右手前にある「鐘楼堂」には厄除けの鐘があり、参拝者は自由につくことができます。
この鐘の裏側には7つの穴が開いており、戦争中の供出のため鐘の材質を調べる為にあけられた穴の跡だと言われています。軍需物資を造るためお寺の鐘や銅像などの金属が集められましたが、この鐘はそんな供出の難から逃れることができ、現在も鐘の音色をこの地で響かせています。そんなことから厄除けだけではなく平和を祈る鐘として、多くの人々が様々な想いを込めて鐘を鳴らします。
願いを込めて、鐘をひとつき!心地の良い和音のような音色が境内に響き渡ります。
なんだか元気がみなぎってきました!
龍を池に閉じ込める!村を守った逸話
ところで、記事の始めにご紹介した岡寺の正式な寺名「龍蓋寺」。「龍」に「蓋」をするとは変わった寺名ですね。一体なぜそういった名がつけられたのでしょうか。その由来には、現在まで言い伝えられている逸話がありました。
昔、明日香村には悪さをする龍がいて田畑を荒らして農民を困らせたといいます。その龍を義淵僧正が法力で池に封じ込め、大きな石で蓋をしたそうです。後に龍は改心して良い龍になり今も池の中に眠ると伝えられています。
境内にはこの逸話に登場する「龍蓋池(りゅうがいいけ)」という池があり、蓋とされる石が残っています。この石を触ると雨が降ると言われており、この言い伝えは現在まで続いている岡寺の「やくよけ信仰」の始まりの一つであるとも言われています。
願いを叶える龍の玉
岡寺には逸話に登場する龍にちなんだ授与品、「龍玉願い玉」があります。願い事を書いた紙を木でできた玉の中に入れ、境内のモチの木に下げると願い事を叶えてくれるそうです。
願い事を入れた龍玉は底のフタをしっかりと閉めます。
本堂の前にはの人々の願いが込められた龍玉がたくさん吊るされていました。
こちらは、お守りとして持ち帰ることもできます。龍が眠るお寺ならではの珍しいお守りですね。
自然の中に隠れる奥之院
本堂を通り過ぎて、奥之院へと続く鳥居をくぐるとまた違った雰囲気を味わえます。
岡寺は山の中にあるため、豊かな自然が広がっています。青いカエデの葉が太陽の影をつくり、木漏れ日に照らされた参道はとても神秘的です。参道のすぐそばには小さな川が流れていました。
訪れた日は気温が高く日差しも強い日でしたが、この参道に足を踏み入れた瞬間とても涼しく感じました。道の隅にはトンボや蝶などが羽を休めている姿もありました。
参道の中程には「瑠璃井」という井戸があり、現在も水が湧き出ていました。この水はお弘法大師ゆかりの厄除の涌き水として知られています。
更に参道を進んでゆくと奥之院石窟に到着です。奥之院では洞窟の中に「弥勒菩薩座像」が安置されています。
洞窟の中を覗くと優しい顔でこちらの方を向く姿が見えます。
大人が小さくかがんでやっと通れるような大きさですが、中まで入って仏像のすぐ近くで手を合わせることができます。洞窟の中はまるで異空間のような、不思議な空気が漂う空間でした。
また、境内には「シャクナゲの道」や、「もみじのトンネル」と呼ばれる道があります。シャクナゲの葉は背の高さを越えるくらいまであり、春の見頃の時期には白やピンクの花が満開になります。
「もみじのトンネル」では今回は夏らしい青いカエデを楽しめましたが、秋には赤く染まった紅葉のトンネルが見られるのも楽しみですね。
もみじのトンネルを抜けた先には見渡しが良い景色が広がっており、明日香村を眺めることができました。
厄除け以外にも多くの参拝者が訪れる岡寺。明日香村に訪れる際はぜひ足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。
【岡寺】
住所:〒634-0111 奈良県高市郡明日香村岡806
TEL:0744-54-2007
入山時間:8:00~17:00 (12月~2月 8:00~16:30)
入山料:大人400円、高校生300円、中学生200円(小学生以下は無料)
交通アクセスなど、詳しくは
Webサイトをご覧くださいませ