角など、細かな部分をより薄くする漉きの作業は集中力が欠かせない。
その時も、鞄工房山本でも当初ミシンがけをしていたこともあり、後の工程に影響が無いようにパーツをどういう順序でそろえなければならないかはよくわかっているという。 「順序の組み立てをして、次の工程のことを考えて準備をしていくことは必要なことですよね。」 多い時には6パーツ分、300個以上を扱う。 「革の表面に傷を付けないために、機械に当てて進みづらい革の時などはスピードを落とすこともあります。コードバンもゆっくりやらなければ漉くことは出来ません。そういった注意を払いながらですね。」 自分なりにこの作業に自信を持って出来るようになったのは1年くらい経ってからだったという。最初は止まったりしながらだったというが自分なりのリズムを掴んでいったという。 「革の状態によって初めから目的の厚みに設定して漉いてしまうと出てきた時に薄くなってしまうこともあります。だから少し厚めの数値から始めて、より少ない回数で規定の薄さにすることは経験が必要です。」 同僚へ指導する際も、こういった経験を元にアドバイスを与えているそうだ。 その廣田が満足できるものとは何か。 「革の状態をすぐに見極め、設計した形にスムースに進んで最短で出来たときは満足というか、達成感を得ますね。もう少し革でも軽い商品が出来ればいいのだろうなとは思いますが、我々の腕にかかっていますね。」本革の漉き〜リズムで革をより強く薄く
裁断された本革を『漉く』作業は、とてもリズミカルだ。
1、2、3、4。ポケット部分の直線部分はこのリズムで歯に革をあて、裏には見事な直線の段差が出来上がる。割りで薄くした革の外側がより薄くなっている。
同じリズムで角のギザギザした部分も行なっていくが、今度は線を引くような動きではなく、形に合わせて革を出し入れするような動きで歯に当てる。他のスタッフには作業中に話を聞くことが出来たが、この作業を行なう廣田には声をかけることがはばかられた。一瞬の加減の違いが部材の出来に左右しそうだからだ。
「そうですね。一定のリズムではやっていますね。」
その最中に、1枚だけはじいたものがあった。
「ぱっと見た時に状態を確認しなければならないと思ったからです。指や目を使って判断しています。」
こういった度重なる確認を行なうことで、絶対の品質を誇るランドセルをつくることが可能となっているのだ。
廣田はこの作業に携わり4年。元々ベビー布団をつくっていたという。