職人の目と手で一枚ずつ…鞄工房山本が『革の吟味』で魅せる技

本革を熟知したランドセルをつくる。 そのためには、天然素材である本革をひとつひとつ丁寧に吟味する事が必要なのだ。 工房主は6年間の耐久性を実現するために、一枚一枚の革を目と手を使い吟味していく。 革の持つ特徴を熟知しているからこそなせる技だ。

一枚一枚、革を吟味していく

鞄工房山本がなぜ「本革を熟知している」ランドセルメーカーなのかを表している事例のひとつが、運び込まれてきた本革を手早く、しかし丁寧に吟味していく作業である。 かぶせやベルトのように負荷がかかり、カーブしている部分は繊維の密度が濃く、強度の強い革が適している。表はキズが無いか、よれている部分等は無いか等、裏面は繊維の密度具合をしっかりと見ていかなければならない。食肉加工時や皮のなめしの際に出来る引っ掻きキズ、シボと呼ばれるしわ、そして、裏面に表れる焼き印の跡やキズなど製品の品質に関わるものは絶対に見逃さない。 「使えない場所があったら、もったいないですが廃棄処分にせざるを得ないですね。」と語るのは、工房主・山本一彦。 片手で大きな革全体を動かしながら、目で光の反射具合を、同時にもう一方の手で、主に指先を使って撫でていく。 真ん中の革にはシワなどが見える。こういった部分は製品には使わない。

真ん中の革にはシワなどが見える。こういった部分は製品には使わない。

この後、白鉛筆を右手に持ち、より細かく吟味しつつ、革の表面に印をつけていく。使ってはならない部分を素早く囲み、あわせて×印をつける事でその後の工程で使ってはいけない部分をしっかりと指定していく大切な作業。「本革を熟知」していなければ、このような判断は出来ないであろう。そして、お客様に満足してもらえるランドセルをこれまでも提供し続けてきた事でも、どれほど本革と言うものを熟知しているのかご理解頂けるかと思う。 本革は、たとえ信頼している業者から納入してもらっていたとしても、自分たちの目で確認する。 一枚一枚の特性を見つける事。親が子どもの個性を見極めて育てていくかのようだ。 それが「究極の耐久性」を実現するために不可欠なのである。

このページをシェアする

関連記事